2024年11月8日佐藤安弘博士

2024年11月8日

佐藤 安弘  博士

北海道大学 環境科学研究院 助教

あなたのお隣はどんな方?GWASで探る植物の個体間相互作用

要旨

  固着性であるという制約上、植物は周囲の他個体から逃れることができない。植物の個体間をめぐっては直接的な競争から他の生物を介した間接的なものまで様々な相互作用が起こり得る。植物の個体間相互作用は種内の異なる遺伝子型間でも起こることが知られており、相互作用を裏打ちする何らかの遺伝的基盤が存在すると考えられる。しかし、そのような複雑な相互作用をどのように研究すればよいだろうか。本発表では、シロイヌナズナArabidopsis thalianaの野生系統を題材にゲノムワイド関連解析(GWAS)を個体間相互作用に拡張した一連の試みを紹介する。まず、個体間相互作用を考慮したGWASを形質予測に利用して、混植による虫害抑制をもたらす遺伝子型のペアを特定した例を紹介する[1]。次に、頻度依存選択の観点から、植物の個体間相互作用を考慮したGWASが植物以外にも拡張できる可能性があることを紹介する[2]。最後に、GWASを用いた関連研究を紹介し、植物間相互作用の遺伝学が生態、進化、さらには農業への応用にまで与える示唆について議論したい[3]。

参考