2023年2月22日
安齋賢 博士
京都大学 大学院農学研究科 ゲノム編集育種講座 特定准教授
メダカから学ぶ性的二型の多様化とその分子基盤
性的二型、すなわちオスとメスの間に見られる様々な表現型の違いは、動物・植物問わず様々な生物で広く観察される現象であるとともに、近縁種間で極めて多様化しやすい形質の1つである。性的二型の進化プロセスは、ダーウィン以来数多の進化生物学者によって研究されてきたものの、原因遺伝子に迫った研究は少なく、その多様化の詳細な分子機構は不明である。演者は近年、インドネシア・スラウェシで急速に多様化したメダカ科魚類を用いて、性的二型の多様化に関わる分子基盤の解明に取り組んできた。本発表では、その中の1種であるウォウォラエメダカをモデルとして、胸鰭の赤色という顕著な性的二型の原因遺伝子同定や、配偶者選択における機能解析を行った研究について紹介する。また、性染色体の網羅的な同定や配偶者選好性の進化機構の解明に向けた神経科学的解析ツールの整備等も含めた、最近の研究も併せて紹介し、性的二型の進化機構の多面的な理解に向けた今後の研究について議論したい。
参考文献
- Ansai, S. et al. (2021) Genome editing reveals fitness effects of a gene for sexual dichromatism in Sulawesian fishes. Nat. Commun. 12: 1350
- Ansai, S. et al. (2022) Diversity of sex chromosomes in Sulawesian medaka fishes. J. Evol. Biol. 35: 1751-64
- 派手な雄は何のため?〜熱帯メダカのゲノム解析が明らかにする性差の多様性の遺伝基盤〜