2022年12月8日川口茜博士

2022年12月8日

川口茜 博士

国立遺伝学研究所 助教

アホロートルから学ぼう

〜巨大ゲノムの三次元構造と再生原理〜

 脊椎動物の総遺伝子数は種間でほぼ変わらない一方で、それをコードするゲノムサイズは種間で大きく異なる。例えば、ヒトの約3.2Gbのゲノムサイズに対して、有尾両生類に属するアホロートルはその10倍の32Gbの巨大ゲノムを持つ。ゲノムサイズの違いはゲノムの三次元立体構造や相互作用スケール、およびそれらに伴う遺伝子発現制御への作用、さらには細胞分裂期には娘細胞への正確な染色体分配を保証する特異的な機構が予想されるが、その一連の制御機構は未だ知られていない。本発表では、アホロートルの巨大なゲノム三次元構造制御の視点から、ゲノムの高次相互作用、転写単位の構成など、ヒト、マウスのゲノムと比較しながら見出された相違点について議論する。最後に、有尾両生類特有の高い器官再生能力を可能にする巨大ゲノムの転写制御機構についての未発表データを織り交ぜながら、「アホロートルはどうして失った腕を過不足なく再生できるのか?」という生物学者を魅了してやまない疑問について考察を加えたい。

 

参考文献

 * Co-first author