2022年4月22日前野ウルド浩太郎博士

2022年4月22日

前野 ウルド 浩太郎 博士

国際農林水産業研究センター 主任研究員

集団生活を営むバッタの繁殖システムは、羨ましい

 どうして、私(42歳・♂)は独身なのだろうか。結婚に憧れを抱いているが、願いは叶わないまま時は過ぎ去ってきた。自己分析によると、結婚できない原因として、出会いがないことが挙げられる。また、たまに出会いがあったとしても、相手に受け入れてもらえないことも問題である。街に繰り出すとたくさんの既婚者を目の当たりにするため、どうやって結婚されたのか不思議でしょうがない。世の中の生物は、一体どのように雌雄が出会い、結ばれているのだろうか。

 ところで、私はアフリカでしばしば大発生し、農作物に深刻な被害を及ぼすサバクトビバッタを研究している。バッタにとっての婚活、すなわち交尾・産卵のための雌雄の出会い方が、もし複雑でやたらと時間のかかるようなものだとしたら、短期間のうちに爆発的に個体数を増加させるなどありえない。なにか特別な繁殖システムを駆使し、スムーズに繁殖をしているに違いない。その秘密を解き明かすことが出来たら、私が結婚相手に巡り合うためのヒントを得られるのではないか。という、不純な動機に駆り立てられ、サハラ砂漠にて野外調査を行い、バッタの繁殖システムの解明に取り組んだ。その結果、雌雄共に理想の相手にスムーズに出会えているという、なんとも羨ましいシステムが駆動していることがわかってきた。そのカギとなる行動は「レック」と呼ばれていた。そのレックにまつわる繁殖生態について本セミナーで紹介したい。

 

参考文献