2021年5月28日齊藤真理恵博士

2021年5月28日

齊藤真理恵博士

ノルウェー生命科学大学

「ネアンデルタール人型」成長ホルモン受容体の進化史

ヒトは他の大型類人猿と異なり、熱帯雨林を離れて世界中へと拡散し、さらに道具を用いた狩猟や調理、農耕を始めて自らの環境を作り変えてきました。このようなヒトの特異な進化史は、ヒトの生物学的基盤をどう形作ってきたのでしょうか。

 

本発表では、ヒトの拡散や文化進化と密接に関連しながら進化してきたと考えられる遺伝子の例として、成長ホルモン受容体(GHR)を取り上げます。この遺伝子の部分欠失多型は現代のヒトにおいて観察され、代謝や成長に関与します。この欠失型は古代人類において優勢であり、資源が限られていた先史時代において、欠失型が有利にはたらいていたと考えられます。一方で、最終氷期、技術革新、および人口増加が起きた約3万年前から東アジアにおいて、自然選択によって欠失型が減少したことが明らかになりました。本発表では、人類集団ゲノムの解析、ゲノム編集マウスを用いた実験から、どのようにしてこの結論に至ったかを、最新の結果を含めて紹介します。