2021年2月25日大林龍胆博士

2021年2月25日

大林龍胆博士

東京工業大学 科学技術創生研究院 特任助教

バクテリアの染色体倍数性進化を考える

染色体DNA(ゲノム)は遺伝情報を受け継ぐ(種を維持する)上で必須であり、最低1つ(真核は1セット)は必要である。大腸菌などの多くのモデルバクテリアは“1細胞あたり1つのゲノムを持つ”1倍体であるように、ゲノムはひとつあれば十分とも言える。一方でバクテリアの中には1細胞あたり複数コピーのゲノムを持つ倍数体も様々な系統で観察され、特に細胞内共生菌に多く見られる特徴である。またバクテリアの共生由来である葉緑体やミトコンドリアも自身のゲノムを数十〜数万コピー保持していることも知られており、ゲノム倍数化はバクテリアからオルガネラまで共通して見られる現象である。しかし、そもそもどのようなメカニズムの違いによってゲノム倍数性に違いが生じるのか、またなぜ複数コピーのゲノムが必要なのかなど、この進化的背景はほとんど理解されていない。これまでの研究をざっくりまとめると、このような倍数性生物は、複数コピーのゲノムを適当に維持しているわけではなく、ゲノム倍数性は厳密に制御されていることがわかってきた。本セミナーではこのゲノム維持機構と複製機構の進化を紹介し、ゲノム倍数化の要因や意義について議論したい。