2020年06月29日田村光平博士

2020年6月29日

田村光平博士

東北大学学際フロンティア研究所

文化進化の数理

生物と文化、このふたつに共通する「めくるめく多様性」は、古くから互いに比較して語られてきた。多様性創出のメカニズムも、ときに他方の研究で提唱されたものを借用しつつ、「進化」を含む様々なものが提唱されている。そして、ダーウィン的な進化は、少なくとも、両者にとって多様性創出の「成功した」モデルといえるだろう。生物進化が「集団中の遺伝的構成の時間変化」として定義されるのになぞらえ、「集団中の文化的構成の時間変化」を文化進化とよぶ。生物の「遺伝」と文化の「伝達」をともに情報の「継承」として捉えることが、このアナロジーの基礎となっている。「ダーウィン的」な文化進化研究は、1970年代に人類学者と集団遺伝学者によって始められ、集団遺伝学ゆずりの数理的基盤をもとに、他の分野と相互作用しつつ発展してきた。そして現在は、いわゆる「ビッグデータ」の解析も含め、他の分野と連携しつつ人類史の諸問題にまでその射程を広げている。

 本講演ではまず、文化進化研究の基本的な概念について概説するとともに、分野の現状について紹介する。そして、考古学データを対象とした講演者の最近の研究について紹介し、文化進化の研究がどのようにして人類史の理解に貢献しうるかを述べる。時間が許せば、文化進化研究の今後についても語りたい。